まず、サラシノミカドヤモリの基本情報について。
分類
学名はCorrelophus sarasinorum、
和名にもあるサラシノはスイスの博物学者である2人のサラシン氏からとられています。(Karl Friedrich Sarasin氏、Paul Benedict Sarasin氏)
英名のルーズゲッコーはスイスの爬虫類研究者、Jean Roux氏からとられています。
クレステッドゲッコーと同じくイシヤモリ科 Correlophus属に分類されます。
以前はRhacodactylus属に所属していましたが2012年、Aaron Bauer氏により所属が変わりました。しかし、ペット業界では今でもラコダク、といえば大体通じます。
※ラコダク=Rhacodactylus属に2012年まで所属していた、
オウカンミカドヤモリ(クレステッドゲッコー)、
ツノミカドヤモリ(ガーゴイルゲッコー)などミカドヤモリの総称
特徴
他のミカドヤモリに比べ、やや細身で長い尾をもち、虹彩の色は灰色がかっているため、クレステッドゲッコーなどと比較すると瞳孔が分かりづらく、ハイライトが目立つ、いわゆるうるうる目をしています。
アダルトのサイズは、
体長は20〜25cm、体重は50〜80gです。
平均寿命は15〜25年程とされています。
ハンドリングは難しいと言われがちですが、そんなことはありません。
驚いた時などに多少素早く移動するだけで、ヒルヤモリや身近なニホンヤモリよりも遅いです。
普段はさっくり捕まるほどの速さです。
※ベビーは驚きやすいので素早いです。
また、爪もさほど鋭くなく、噛まれた時もマモノミカドヤモリ、ツギオミカドヤモリなどと比較して痛みもほぼないです。
同属のクレステッドゲッコーに比べ、アダルトは飛び跳ねることが少ないです。
大型ヤモリの中でも、
ハンドリングはとてもしやすいとおもいます。
生息地
オーストラリアの北東にあるニューカレドニア島の南部に生息しています。
ニューカレドニアは年間を通して気候変動が少なく平均24度程です。
22~26度程を維持すると良いでしょう。
要は人間が過ごしやすい気温でエアコンをつけっぱなしにすれば大丈夫です。
昼夜で温度差が10度を超える日もあり、夜は特に気温が下がります。
そのため暑さには弱いですが、寒さにはある程度(18度程)までは正常に活動できます。
また、太平洋の風の影響で常に湿度が高いため、やや多湿で飼育すると良いでしょう。
現在、ニューカレドニアは野生動物の輸出を禁止しているため、
販売されている個体は研究者などが繁殖させたCB個体のみになっています。
そのため、WCの他のヤモリよりも比較的人慣れした個体が多いです。
※WC=Wild Caught 野生で捕獲された個体。CBより安いことが多い。
CB=Captive Bred 繁殖された個体。WCより扱いやすく安定していることが多い。
サラシノミカドヤモリは野生化では森林の中、ツタや樹上で生活しています。
ただし、完全な夜行性であるとは言えず、
朝方や穏やかな日差しの日には地表に降りて日光浴をする個体もいます。
また、他のミカドヤモリに比べ、地表にいる時間は多いとされています。
落ち葉や枯れ木の下に潜んでいたりもします。
クレステッドゲッコーより地上にいる時間が長いため、跳ねるよりも地面を移動することが多く、クレステッドゲッコーと同じ飼育環境だとカルシウム不足になりやすいため、弱いUVBランプを付けることを推奨します。
柄
ミカドヤモリの中で一番カラーバリエーションが少なく、主に3パターンの柄が確認されています。
名称はショップなどにより異なることもありますが以下の呼ばれ方が一般的です。
・ノーマル
(無地)
・ホワイトカラー(白襟)
うちにいないので写真はないです…。
・ホワイトカラー&ホワイトスポット
(首の周りに白いバンドがある個体、背に白い斑点模様がある個体)
ホワイトカラーは優性形質、ホワイトスポットは劣性とされていますが、サラシノミカドヤモリのサンプルはまだ少ないため断定はできません。
他にもインクスポット(黒い斑点)の多い個体や、ホワイトカラーのみの個体などごくたまにもいますが、一般流通はあまりまだないです。
これから増えていく可能性に期待です。
また、温度や湿度によっても体色の濃淡が変わります。
吸盤
趾下薄板(いわゆる吸盤)を持ち、尾の先にもほんの少し存在します。
そのため樹上でバランスをとったり、落下防止などに使われていると考えられています。
サラシノミカドヤモリは特に他のミカドヤモリと比べて尾が長いため、器用に枝からぶる下がったりすることが可能です。
食性
基本的に果物や昆虫を食べる雑食性です。
ニューカレドニアではスイカやバナナ、パパイヤ、マンゴー、イチジクなど多くの種類の果物が栽培されているため、それらをベースに昆虫を加えた多種多様な人工フードが開発されています。
人工フードのみでもベビー用、アダルト用などを使えば終生飼育も可能です。
逆に、昆虫のみでもサプリメントをまぶせば終生飼育が可能です。
(人工フードが開発されるまでは昆虫かすりつぶした果物のみであったため)
サラシノミカドヤモリは他のミカドヤモリに比べ、カルシウム不足になりがちなので
ダスティング(餌にサプリメントをまぶすこと)はしっかり行いましょう。
ベビーやヤングなどの若い個体は、昆虫を多めに与えた方が成長は早くなります。(ベビー用の人工飼料も例えばZOOMEDならブルーベリーはプロテインが25%、その他の味は22%となっています)
クレステッドゲッコーと同じく、アダルトになるにつれ果物を好むようになる個体が多いです。
繁殖
性成熟はほかのヤモリと比較して遅く、おおよそ4年とされていますが、個体差も激しく一概には断定できません。
そのためほかのヤモリと比較し、3歳程まで
脱皮を2週間~3週間ほどの速い頻度で行います。
クレステッドゲッコーと同じく卵生で、メスは2つずつ卵を持ち、おおよそ60日から90日で孵化します。
繁殖用個体の体重の目安は最低でも65gはあると安心です。
今のところノーマルとノーマルを掛け合わせても、ノーマルが生まれることが多いようです。
参考(敬称略):
Correlophus Sarasinorum | Sarasingecko - Neukaledonien-Geckos
https://www.biotaxa.org/Zootaxa/article/view/zootaxa.3404.1.1
Introduction to the New Caledonian Giant Geckos - Capital Geckos
Correlophus sarasinorum - Facts, Diet, Habitat & Pictures on Animalia.bio
クレスとサラシノ🦎👅 (@luvyourgecko) / Twitter
『ディスカバリー 生き物・再発見 ヤモリ大図鑑』著者: 中井 穂瑞領 写真: 川添 宣広
『ミカドヤモリの教科書』 著者: 西沢 雅 編集: 川添 宣広